巻取り(リワインド)や繰出し(アンワインド)の現場で発生する 張力変動(tension fluctuation)は、蛇行・シワ・端面乱れ・スリップ・伸び量のばらつきなど、品質と歩留まりを直撃します。特に薄膜、紙、箔、不織布、粘着材などでは、わずかな unstable tension / winding tension problem が不良につながりやすく、対策は「装置の調整」だけでなく、制御方式と駆動要素の適合まで踏み込む必要があります。
本稿では、巻取りアプリケーションにおける張力変動を センサー(計測)・制御・機械(伝達/慣性/摩擦) に分解して原因を切り分け、パウダクラッチ / パウダブレーキ + テンションコントローラー(PLB/POC + TCP 控制器) を中心に、実装手順と選定ポイントを整理します。
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なぜ「パウダクラッチ/パウダブレーキ + テンションコントローラー」が効くのか
巻取りの張力は、ライン速度、ロール径、摩擦、材料特性の変化を受け続けます。張力変動の本質は、「必要トルクが時々刻々変わるのに、供給トルクが追従できていない」ことです。
- テンションコントローラー:張力センサー(ロードセル等)からの信号を基に、目標張力に向けて出力を調整する(閉ループ制御)。
- パウダクラッチ / パウダブレーキ:入力側の回転変動や負荷変動を受けても、比較的滑らかにトルクを生成し、微小な補正に追従しやすい。
つまり、張力を「測って」「制御して」「滑らかにトルクへ反映する」構成が、tension fluctuation の抑制に直結します。特に、ロール径変化の影響が大きい巻取りでは、手動調整や開ループ制御のみでは限界が出やすく、閉ループ+適切なトルク要素の組み合わせが有効です。
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アプリケーション別:どこで揺れるか(シナリオマッピング)
張力変動は、発生箇所により対策が変わります。以下の代表シナリオで切り分けると、改善が早くなります。
1) アンワインド側で揺れる(繰出し張力が不安定)
症状:材料が脈動する、ガイドロールでバタつく、印刷/ラミで見当不良。
主因:
- ブレーキトルクの追従不足、摩擦の温度依存
- ロール偏芯、ベアリング抵抗変動
- センサー取り付け位置が不適切(張力が平均化されない)
基本対策:パウダブレーキ + テンションコントローラーで繰出しトルクを閉ループ制御し、センサー位置/ダンサ構成を最適化。
2) リワインド側で揺れる(巻取り張力が不安定)
症状:端面乱れ、硬巻/軟巻のムラ、シワ、層間滑り。
主因:
- 巻取り径増加に対し、トルク指令が適切に変化していない
- 巻取りコアの滑り、ニップ圧や接触条件の変動
- 伝達系のバックラッシ、カップリングのねじれ
基本対策:パウダクラッチ(または巻取り駆動側のトルク制御)+ テンションコントローラーで追従性を確保。巻取り軸周りの機械剛性も確認。
3) 加減速・停止直前だけ揺れる(過渡応答の問題)
症状:立上げで一瞬伸びる、停止直前に弛む、再起動で衝撃。
主因:
- 制御ゲイン過大/過小、フィルタ設定不適合
- 慣性が大きく、応答遅れが張力に現れる
- 機械抵抗の静摩擦→動摩擦の切替
基本対策:制御パラメータ調整(応答と安定のバランス)+過渡時のトルク余裕確保。必要ならダンサ併用。
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選定・設計の重要ポイント(現場で効く基準)
1) まず押さえる関係式(1つだけ)
巻取り/繰出しで必要になるトルクの基本は次式で整理できます。
トルク T ≒ 張力 F × ロール半径 R
言い換えると、同じ張力でも ロール径(R)が変われば必要トルクが比例して変化します。径変化の大きい工程ほど、トルク制御の追従性とレンジが重要になります。
2) トルクレンジと熱(連続運転で効く)
パウダブレーキ/パウダクラッチは、滑りを利用してトルクを作るため、条件によっては発熱が支配的になります。以下を事前に確認します。
- 低速・高張力・大径ロール:発熱が増えやすい
- 連続運転時間、周囲温度、放熱条件
- 余裕のある容量選定(トルク上限ギリギリで使わない)
「張力は合うが時間と共に揺れる」ケースは、温度上昇による特性変動やセンサーゼロ点ドリフトが絡むことがあります。
3) センサー(ロードセル等)の配置と「平均化」
閉ループの性能は計測で決まります。張力変動が止まらない場合、制御の前に以下を点検します。
- ロードセルロールの巻き付け角(小さすぎると感度不足)
- ガイドロール配置で張力が局所化していないか
- 機械的干渉(配線引っ張り、取付のねじれ)
- ノイズ(インバータ/サーボ、アース、シールド)
「実際の張力」と「センサーが見ている張力」がズレると、テンションコントローラーは正しく制御できません。
4) 制御方式:開ループ補正か、閉ループ安定化か
- 開ループ(径演算など):径情報が正確で、材料変動が小さいと有効。ただし摩擦・滑り・偏芯の影響を拾いにくい。
- 閉ループ(張力フィードバック):材料/摩擦変動に強く、張力変動の対策として基本形。
現場では、閉ループをベースに、必要に応じて径補正や速度連動を併用して安定域を広げます。
5) PLB / POC + TCP 控制器の適用目安
- アンワインドの張力安定化:PFB(パウダブレーキ) + TCP 控制器
- リワインドの張力安定化:POC(パウダクラッチ) + TCP 控制器
- 既存駆動(モータ/減速機)を活かし、張力だけを安定化したい:パウダ方式が実装しやすいケースが多い
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よくある失敗と実務上の注意点(改善が戻るポイント)
1) 「容量は大きいほど良い」で選ぶ
過大容量は制御分解能が粗くなったり、微小トルク域の扱いが難しくなることがあります。必要レンジに対し、安定して使える範囲で選定します。
2) 張力変動の原因を制御だけで直そうとする
バックラッシ、芯ブレ、ロール偏芯、軸受抵抗変動、芯滑りなどの機械要因は、制御で完全に消せません。特に「周期的な揺れ」は機械起因の比率が高いことが多く、回転同期の揺れ(1回転/数回転周期)を疑います。
3) ロードセルのゼロ点・配線・ノイズ対策が不十分
ゼロ点の漂い、アナログ信号の揺れは、そのまま張力指令の揺れになります。シールド、アース、配線ルート(動力線から距離を取る)、フィルタ設定を含めて再点検します。
4) 立上げ/停止の条件を通常運転と同じにしている
加減速は最も張力が崩れやすい領域です。必要に応じて、
- 立上げ時のソフトスタート
- 停止前の張力保持/解除シーケンス
- ダンサのストローク管理
など、過渡専用の条件を用意します。
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まとめ:手順で直す(現場向け簡易ステップ)
- 張力波形を取得(周期性、速度依存、径依存を確認)
- センサー系を点検(取付、巻き付け角、ゼロ点、ノイズ)
- 機械要因を除去(偏芯、滑り、バックラッシ、抵抗変動)
- PLB/POC + テンションコントローラーで閉ループ化(必要なら径補正併用)
- ゲイン/フィルタ/過渡条件を調整(立上げ・停止で再確認)
張力変動は「一発の部品交換」で止まるより、計測→機械→制御→熱/余裕の順で詰める方が再発しにくく、結果的に短期で安定します。





