巻取り(Winder)・巻戻し(Rewinder)工程の張力は、製品品質(シワ、伸び、蛇行、端面乱れ、巻硬さ)と設備稼働(断線、停止、段取り時間)を同時に左右する最重要パラメータです。フィルム、紙、箔、不織布、テープなどのウェブ材では、運転中に巻径が大きく変化し、摩擦や材料特性も揺れるため、「狙いの張力を安定して維持する」こと自体が難易度の高いテーマになります。
本記事では、現場で再現性をもって張力を安定化させるために、計測×アクチュエータ×制御の観点で、巻取り・巻戻しに適したソリューションを整理します。特に、パウダブレーキ/パウダクラッチとテンションコントローラー(TCP)を中心に、導入・改造時の判断基準を明確化します。
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1. まず押さえるべき課題:張力が乱れる「典型パターン」
1) 巻径変化で必要トルクが変わる
巻取り・巻戻しでは、ロール径(巻径)が運転中に大きく変化します。張力Tを一定にしたい場合、必要なトルクτは概ね次式で増減します。
τ ≈ T × R(T:張力、R:巻径)
つまり、巻径が大きくなるほど同じ張力を維持するにはより大きなトルクが必要です。
この補償が不十分だと、巻始め・巻終わりで張力が大きく外れ、シワや端面乱れ、断線につながります。
2) ブレーキ特性が温度・経時で変動する
パウダブレーキ等は使いやすい一方、粉体状態や温度上昇、経時変化の影響を受けやすく、「同じ指令でも同じトルクが出ない」状態が起こり得ます。結果として張力が再現しない、停止が増える、といった課題に直結します。
3) 材料特性ばらつき(伸び・滑り)が張力に現れる
ロット差、含水率、温湿度、表面処理の違いなどで、材料の伸びや滑りが変わると、同一設定でも品質が揺れます。特に薄物・低張力では外乱の影響が顕著です。
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2. この用途に効く基本解:閉ループ張力制御+巻径補償
巻取り・巻戻しの実務では、次の組合せが最も安定性と適用範囲に優れます。
- 計測:ロードセル or ダンサーロール
- アクチュエータ:パウダブレーキ/パウダクラッチ(または駆動系)
- 制御:テンションコントローラー(TCP)による張力フィードバック(閉ループ)
- 補助:巻径補償(フィードフォワード)
ポイントは、巻径補償だけ(オープンループ)に依存しないことです。巻径推定が合っていても、摩擦や材料ばらつきがあれば張力はズレます。そこで、テンションコントローラー(TCP)でロードセル/ダンサーの実測値を取り込み、目標張力に収束させる構成が、品質と稼働率の両面で効果的です。
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3. シナリオ別マッピング:巻戻し/巻取りで考え方が変わる
巻戻し側(Unwind):供給張力の安定が最優先
- 狙い:下流工程(印刷、ラミ、塗工、スリット等)に対して、一定張力で材料を供給する
- 典型課題:加減速で張力が跳ねる、ブレーキ熱で張力が揺れる、蛇行が増える
- 推奨構成例:
- 計測:ロードセル(高精度)またはダンサー(外乱吸収)
- 駆動:パウダブレーキ
- 制御:テンションコントローラー(TCP)で張力閉ループ+巻径補償
巻取り側(Rewind):端面品質・巻硬さを含めて設計
- 狙い:端面乱れ(テレスコ)、内層シワ、空気巻込み、巻硬さムラを抑える
- 典型課題:張力一定だけでは巻硬さが合わず不良が残る
- 推奨構成例:
- 計測:ロードセル/ダンサーによる張力フィードバック
- 駆動:パウダクラッチ(または駆動系)
- 制御:テンションコントローラー(TCP)+巻径補償
- 運用:材料によりテーパーテンション(巻径に応じて張力を変える)を併用
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4. 選定の要点:失敗しないためのチェック項目(実務向け)
4.1 計測方式:ロードセルとダンサーの使い分け
- ロードセルが向くケース
- 張力の「数値管理」を重視(レシピ化、品質監査、条件出し短縮)
- 薄物で見当・寸法変動を抑えたい
- 注意:取付剛性、偏荷重、ノイズ、容量レンジが性能を左右
- ダンサーが向くケース
- 低張力、外乱が大きい、加減速が多い
- 張力を「緩衝」させて断線を減らしたい
- 注意:摩擦、ストローク不足、機械ガタでハンチングが出やすい
4.2 パウダブレーキ/パウダクラッチの容量と熱
- 定格トルクは「最大張力×最大巻径」だけでなく、加減速頻度・連続運転・放熱条件で余裕を見ます。
- トルクの再現性が課題の場合は、テンションコントローラー(TCP)による閉ループで変動分を吸収し、必要に応じて容量や冷却条件を再検討します。
4.3 制御方式:オープンループにしない
- オープンループ(巻径推定のみ)は構成が簡単ですが、材料・摩擦のばらつきに弱く、品質が安定しにくい方式です。
- 実務では、巻径補償(前もって必要トルクを見込む)+張力フィードバック(実測で合わせ込む)の組合せが最短で安定化に到達します。
4.4 ゾーン張力(工程ごとに張力を分ける)
アンワインド~プロセス~リワインドを「同一張力」で通すと、どこかの工程で無理が出ます。工程ごとの要求(たとえばスリット前後、ラミ前後)に合わせて張力セットを分離し、テンションコントローラー(TCP)側で管理できるようにすると、条件出しと再現性が大きく改善します。
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5. よくある失敗・注意点(導入/改造で差が出るポイント)
1) ロードセルの容量が合っていない/取付が弱い
過大容量で分解能が出ない、取付がたわんでノイズが乗る、といった理由で制御が不安定になります。実張力の中心域で使えるレンジと、偏荷重が出にくい機械設計が重要です。
2) 加減速が急で張力制御が追従できない
制御器の調整だけでは限界があります。速度プロファイル(ジャーク抑制)と、巻径補償のフィードフォワードを併用し、必要ならダンサーで瞬間外乱を吸収します。
3) 巻取り品質を張力一定だけで作ろうとする
端面乱れや巻硬さは、材料特性・空気巻込み・接触条件の影響が大きく、張力一定だけでは収束しません。テーパーテンションや巻取り条件(押圧・エア抜き・コア剛性)を含めた設計が必要です。
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6. 推奨ソリューション例(PLB / PFB + TCPでの実装イメージ)
- 巻戻しの張力安定(既設改造にも適用)
- パウダブレーキ(PLB/PFB)+テンションコントローラー(TCP)+ロードセル(またはダンサー)
- 期待効果:加減速時の張力乱れ低減、蛇行・断線の抑制、条件再現性の向上
- 巻取りの端面・巻硬さ改善
- パウダクラッチ(POC/PHC)+テンションコントローラー(TCP)+ロードセル+巻径補償+テーパーテンション
- 期待効果:端面乱れ低減、内層シワの抑制、後工程の解反安定






